私は、時間にルーズ。

人間、苦手なことの一つや二つはあるものだから、しょうがない。

父と母は優しいけど、時間を守ることには厳しくて、私はよく叱られ泣いてたな。

それが社会というものなのかも。

自由ってなんだろう？
いっちょ前にそんなことを考えるようになった頃、大学生活がスタート。

一人暮らしもその頃から始まり、朝寝坊しても両親に怒られないことに、
これが自由かと思い始めていた。

私が時間にルーズだからか、
両親がくれた大学入学祝いは、腕時計だった。
でも普通の時計じゃなくて、時計のパーツを組み合わせてつくれるという代物。
興味しんしん。

就職したものの毎日忙しく余裕がなさすぎる。
働くことの厳しさが身にしみる。
入社してから失敗の連続で、悔し涙の毎日。

どうすればいい。
どうすればいい？

ふと腕元を見ると、あの時両親からもらった腕時計。
そうだ、この時計は買った後もカスタマイズできるって、聞いていたな…
気分転換にビジネス用にシックにして、明日も頑張ろう！

プレゼン中、その場で必死に思いついたことが評価され、仕事は順風満帆に。
気が抜けないけどね。

失敗からは本当にたくさんのことを勉強したな。
そういう意味で、失敗は私の先輩です。

そんなことを考えてると、憧れの先輩にこの時計を褒められた。
そうだ！この時計をきっかけに話しかけよう。

とりあえず、ベルトを変えてお手軽イメージチェンジ。

腕時計のイメチェン作戦が効いたかな。

月日を重ね、ついにこの日が。
これからは先輩と後輩じゃなくて、夫婦の関係。

「気持ちはいつも一緒」。

なんて口にはお互い出さないけれど、ペアウォッチがその証。

待望の子供は元気に生まれ、家じゅうを毎日動き回る怪獣。
この子が大きくなってこの家を出ていく時を想像すると、嬉しくもあり悲しくもあるな…
そうだ、その時が来たら、私のこの時計をプレゼントしよう。父と母が私にしてくれたように、私もわが子に。
私たちと私の両親の愛情がこもったこの時計を。きっと私に似て、時間にルーズだろうから。

私も親になって、ようやくわかった。
かわいいカワイイわが子が心配でたまらないこと。

あぁ、そうかだから時計をプレゼントしてくれたのかな。
私を心配に思う両親の気持ちがよくわかったように思えた。そう思った瞬間、うれし涙が...

やっぱり泣き虫は、なおらないな。